令和6年分まで、年収103万円以下の給与所得者(会社員、パート・アルバイト等)は所得税がかかりませんでした。
「103万円」の根拠は、給与所得控除の最低保障額55万円と基礎控除額48万円の合計です。
令和7年度税制改正により、給与所得控除と基礎控除の金額が見直され、所得税の課税最低限が「160万円」まで引き上げられました。
○給与所得控除:令和7年分以降、年収190万円以下の人は「65万円」になります。
○基礎控除:年収200万円相当以下の人は、「95万円」となります。
年収200万円相当超2,545万円相当以下の人は、令和7年分・8年分に限り、4段階で基礎控除額が変わります(88万円・68万円・63万円・58万円)。
ほとんどの給与所得者に適用される基礎控除額が引き上げられたことで、令和7年分・8年分の所得税については、幅広い年収層で2万円から3万円程度の減税となります。
令和7年分については年末調整で減税分を還付することになるため、年末調整事務が複雑になることが予想されます。
TKCの「FXクラウドシリーズ給与計算機能」「TKCまいポータル」を利用することで、複雑な年末調整事務を効率化・省力化することが可能です。詳細は当事務所へお問い合わせください。
「費用」とは、収益を得るために発生する支出のことを指します。
そのため、一定期間の収益とその費用は必ず対応させること、また、発生した期間に正しく割り当てられるように処理することが求められます(費用収益対応の原則)。
つまり、「今期の費用は今期に、翌期の費用は翌期に」が費用計上の大原則です。
加えて、「いつ費用にできるか」というタイミングには、税務においても一定のルールがあります。
これは「課税の公平性」の観点から、利益操作のための支出や収益との対応期間のズレがないようにするためです。
税務上の費用は「損金」といい、例えば、売上高を得るために直接要する費用(売上原価)は、売上に対応する分だけが損金として計上できます。
販売費や一般管理費その他の費用は、減価償却費等を除き、「当期中に債務が確定しているもの」が損金に計上できます。
「当期中に債務が確定しているもの」とは、
決算日までに、①その費用に係る債務が成立していること
②具体的な給付をすべき原因事実が発生していること
③金額が合理的に算定できること――のすべての要件を満たしているものをいいます。
「適時・正確な記帳」のために、「費用」の処理についていま一度確認してみましょう。
「お客様の声」は、自社の商品やサービスの開発・改善における大事なヒントです。
一方、「お客様」の立場を利用し、過剰あるいは理不尽な要求、攻撃的な振る舞いをする人も。そうした人の行為は「カスタマーハラスメント(カスハラ)」と呼ばれ社会問題となっています。
かつてはカスハラにあたる事例が起きても「顧客対応の一環」と捉える向きもありましたが、「働き方改革」の推進や少子高齢化に伴う人手不足により、従業員の立場が重んじられるようになり、顧客対応のあり方も見直されています。
カスハラ被害に遭った従業員のケアを怠ると、離職につながるだけでなく、採用に影響を及ぼすおそれも。カスハラの事案が生じたら、まずは従業員に寄り添うことが大切です。
また、自身がカスハラを行ってしまうおそれがあることも忘れてはいけません。商売において、売り手と買い手は対等であることを、あらためて意識しましょう。
従業員に対する給与・賞与等は、税務上、損金算入が認められています。
一方、会社役員に対する給与・賞与等(役員給与)は、利益調整等の「経営の恣意性」の排除といった観点から、原則として損金不算入とされています。
ただし、中小企業では、「定期同額給与」「事前確定届出給与」のどちらかに該当すれば、不相当に高額な部分を除き損金算入が認められています。
「定期同額給与」「事前確定届出給与」の支給には一定のルールがあり、そのルールに従った運用が求められます。
安易な中途改定は、税務上のリスクが伴います。
期中の支給額変更を避けるためには、経営計画から導いた業績予測を基に支給できる役員給与の総額を算出した上で、月額給与を決めていくことが大切です。
詳細は、当事務所までご相談ください。
子育て世帯の経済的負担を軽減し、安心して子育てができる環境を整えることを目的として、令和7年度税制改正において、子育て世帯等を対象として、①住宅ローン控除の拡充の延長 ②住宅リフォーム税制の拡充の延長③生命保険料控除の拡充──が行われます。
①住宅ローン控除の拡充の延長
令和6年限りとされていた子育て世帯等(19歳未満の子を有する人、またはいずれかが40歳未満の夫婦)に対する住宅ローン控除の借入限度額の上乗せ措置および床面積要件の緩和措置が、
令和7年に限り引き続き適用できるようになりました。
②住宅リフォーム税制の拡充の延長
子育て世帯等が現在所有・居住しているマイホームに一定の子育て対応改修工事(リフォーム)を行った場合に、標準的な工事費用相当額(250万円を限度)の10%に相当する金額等を
所得税から控除できる制度です。令和7年に限り引き続き適用できるようになりました。
③生命保険料控除の拡充
令和8年分の措置として、子育て世帯(年齢23歳未満の扶養親族がいる世帯)を対象に、所得税の生命保険料控除において、新生命保険料に係る一般生命保険料の控除額の計算方法が見直され、その上で、適用限度額が最高6万円(現行:4万円)に引き上げられます。
これまで氏名の「フリガナ」は戸籍の記載事項とされていませんでしたが、令和5年6月に戸籍法が改正され、戸籍の記載事項に、新たに氏名のフリガナが追加されることになります。
この制度は、令和7年5月26日からスタートします。
制度開始日以後に、出生等により初めて戸籍に記載される人は出生届等の届出時にあわせてそのフリガナを届け出ることとなりますが、
それ以外の人は、次のような流れで戸籍へフリガナが記載されます。
(1)令和7年5月26日以降、本籍地の市区町村から戸籍に記載される予定の氏名のフリガナの通知が届く
(2)通知されたフリガナが正しいかどうか確認する(正しい場合、特段の手続きなし)
(3)フリガナが誤っている場合、令和8年5月25日までに正しいフリガナの届出が必要(マイナポータルから届出可能)
インボイス制度の開始で売り手・買い手双方に留意すべき点が増えた請求業務。
社内外の関係者とのやりとりも多く、人為的ミスが起きやすい業務の1つです。
そうした中、「デジタルインボイス」を中心としてデータ連携させれば、売り手・買い手の双方で「手間いらず」な請求業務が実現します。
デジタルインボイスとは、請求書の発行から受領まで、一切人の手を介さずに、売り手と買い手のシステム間で直接データを連携させて自動処理する仕組みです。
PDF等の電子データとは異なり、データの項目が統一されている(標準化)、コンピュータが読み取りやすい形式になっている(構造化)――ことから、
売り手・買い手の双方で、請求データ発行/受領後の作業が自動処理されるのです。
業務をより効率化し、時間外労働の抑制や人手不足に対応していく上でも、デジタルインボイスへの対応は必要不可欠といえます。
iDeCo(個人型確定拠出年金)とは、国民年金や厚生年金等の公的年金に上乗せする年金制度の1つです。
加入は任意で、加入者は、自身で設定した掛金を拠出し、その掛金を元手に自ら選んだ金融商品で運用。運用益を含めて積み立てた年金資産は、原則60歳から受け取ることができます。
働き方やライフコースが多様化する中、老後に向けた資産形成をより一層促進する観点から、令和7年度税制改正において、iDeCoの毎月の拠出限度額が引き上げられます
(確定拠出年金法等の改正が前提であり、引き上げの具体的時期は未定/令和7年2月1日現在)。
第2号被保険者(会社員等)の場合、企業年金と共通の拠出限度額に一本化。
企業年金の有無にかかわらず、「iDeCo+企業年金」の合計拠出限度額は月額6万2,000円となります。
第1号被保険者(自営業者やフリーランスの人)の場合、「iDeCo+国民年金基金等」との合計拠出限度額は月額7万5,000円となります。
「自分の財産を誰にどれだけ残すのか」という意思表示を書面にしたものが遺言書です。
一般的に用いられる遺言書には「公正証書遺言」「自筆証書遺言」があります。
「公正証書遺言」は、公証人が遺言書の作成を手掛けるため無効になる可能性が低く、原本は公証役場で保管されるので改ざんや盗難・紛失等のおそれがありません。
その反面、証人が2人以上必要で、費用や手間がかかります。
「自筆証書遺言」は、遺言の全文は自筆でなければなりませんが、費用や手間がかからない一方で、「一定の要件を満たしていないと、遺言が無効になる」「破棄、隠匿、改ざんされるおそれがある」といった課題があります。
こうした課題を解消し、自筆証書遺言を安心して残しやすくするための制度が「自筆証書遺言書保管制度」です。
この制度は、遺言書の作成者本人が遺言書を法務局に持参し、本人確認を受けた後、法務局において自筆証書遺言(原本)とその画像データが保管されるものです。
①法務局で保管されるため、紛失や隠匿、改ざん等のおそれがない
②民法で定める自筆証書遺言の形式に適合するかについて法務局が確認するため、外形的なチェックを受けられる
――等の利点があります。
なお、遺言書の作成にあたっては、税務への影響もあるため、税理士にお声掛けください。
決済手段の1つである、紙の約束手形。
約束手形を振り出して支払う側の企業(支払企業)にとっては、①現金での支払日を延ばせるため資金繰りに余裕ができる、②金利が発生しないためコストが削減できるといったメリットがあります。
一方で、約束手形を受け取る側の企業(受取企業)にとっては、その裏返し。
また、多くの場合、支払企業は仕事を発注する側であり、受取企業は仕事を受注する側=下請の立場にあります。
こうした取引上の立場の違いもあり、紙の約束手形による支払いは、受取企業が資金繰りに苦しむ要因の1つとなっていました。
そこで政府は、「2026年をめどに、紙の約束手形の利用を廃止する」との方針を打ち出し、これを受けて産業界・金融界では、その実現に向けた取り組みが進められています。
現在、支払手段の1つとして紙の約束手形を利用している企業は、
2026年までに、①現金による支払い(原則/インターネットバンキングによる銀行振込を含む)②電子記録債権(でんさい)による支払い――のいずれかの支払手段に切り替えることが必要です。
また、2024年11月以降、下請法(下請代金支払遅延等防止法)の運用ルールが変更され、交付から満期日までの期間が60日を超える約束手形等による支払いは、業種を問わず行政指導の対象となりました。
決済手段のデジタル化とともに、支払サイトの短縮が必要な場合は、新たに生じる運転資金の調達方法も考慮しましょう。
「良い人を採用したいけれど、なかなか見つからない……」と、人材採用について悩まれている社長も多いのではないでしょうか。
近年、特に若い世代の労働人口が減少しており、採用に関する競争率は格段に高くなっています。
こうした中、中小企業でも比較的取り組みやすい採用手法として注目され始めているのが「リファラル採用」です。
リファラルとは「推薦」「紹介」という意味で、社員等に知人・友人を紹介してもらい、入社につなげるというもの。
対象となる人材に直接アプローチできる点が、リファラル採用の最大の特徴です。
知名度の高い大企業や地元の同業他社等との競合を避けられる――等のメリットがあることから、リファラル採用は、中小企業こそ試す価値があるといえます。
リファラル採用に取り組む場合には、会社の制度として規程を設け、社員に周知することが重要です。
また、「社員が紹介したくなる良い職場」であることも大前提。採用の仕組みを整えることはもちろん、現社員に対する待遇面の改善等にもきちんと取り組みましょう。
商売繁盛の「カナメ(要)」となるのが、「日々の記帳(毎日、会社で会計データ〈仕訳〉を入力すること)」と、年12回の「月次決算」です。
日々の記帳は、①自社を守るための証拠づくり②経営者自身への報告(自己報告) という2つの側面があります。
日々の記帳が習慣になっているか否かで、お金の使い方や行動にも大きな差が出てきます。日々の記帳を良い習慣としてしっかり根付かせましょう。
月次決算とは、「経営者自身が、毎月の業績を翌月早々に把握でき、かつ、活用できる状態」を指します。
そのためには、発生主義で正しく月次決算を行い、前月の取引にかかった費用/得た収益を正確に把握することが何よりも重要になります。
これらの前提は、①正確な日々の記帳をサポートする法令に準拠した会計システムを活用すること②会計事務所のチェック・助言を毎月受けること(月次巡回監査) です。
一緒に商売繁盛を目指しましょう。
会社の経営にとってキャッシュ(現金・預金)は、人間の体でいう血液に相当します。
人が貧血になれば倒れてしまうように、会社のキャッシュが少なくなれば企業活動は停滞し、倒産という事態にもなりかねません。
会社のキャッシュを増やすことは、経営を安定させ、将来への投資を自己資金で行えるなど経営の自由度が増すことにもつながります。
「キャッシュがきちんと生み出されているか」は、キャッシュ・フロー計算書で確認しましょう。
「Ⅰ 営業活動によるキャッシュ・フロー」「Ⅱ 投資活動によるキャッシュ・フロー」「Ⅲ 財務活動によるキャッシュ・フロー」の3つに分類され、それぞれの活動でキャッシュがどれだけ増減し、最終的にどれだけ残ったのかが表示されます。
自社のキャッシュ・フロー計算書を見ながら、あらためて最近の経営状況を思い返し、今期、来期の資金計画に活かしてみましょう。
会社の資産と経営者個人の資産の区分が曖昧になりがちな中小企業では、外部関係者からの信頼を高めるための第一歩として、会社と経営者個人の資産を明確に区分・分離することが重要です。
そのための具体策としては、
①経営者個人が所有する資産が会社の業務に使われている場合、賃貸契約書を作成して会社から経営者へ適切な賃料等を支払う
②事業に使っている経営者個人の資産はできる限り会社所有とする――などが挙げられます。
また、「経営の基本」である現金管理も、会社と経営者個人の資産を区分するための重要な対応策となります。次のような対応が自社で徹底できているか見直してみましょう。
〇小型の金庫やコインカウンター等を用いて、会社と個人の現金が混ざるのを防ぐ
〇現金出納帳と実際の現金の残高合わせを毎日行う
〇クレジットカードは会社用と個人のカードを分けて使う
〇立替金および経営者への仮払金や貸付金は、早めに精算する
経営者にとって、経営意思決定の大きな「拠りどころ」となるのが「変動損益計算書」です。
変動損益計算書とは、売上高の増減で変化する費用を変動費に、売上高にかかわらず発生する費用を固定費に分類して表示した損益計算書のことです。
通常の損益計算書に比べ、変動損益計算書は売上が変わった時のシミュレーションが簡単で、例えば「売上増に伴って新しく従業員を採用した場合、利益がいくら変わるのか?」といった経営上の判断をする時に役立ちます。
そして、変動損益計算書の大前提となるのが、正確な月次決算データです。
そのためには、①適時・正確な記帳②証憑の整理や仕訳入力等を自社で行う「自計化」③請求書や経費精算の徹底管理――の3つのポイントを押さえましょう。
月次決算を徹底し、変動損益計算書で自社の経営状態をタイムリーかつ正確に把握することで、問題点等に迅速に対応できるようになります。
損益がトントン、経常利益がゼロになる点(限界利益=固定費)を「損益分岐点」といい、そのときの売上高を「損益分岐点売上高」(固定費÷限界利益率)といいます。
現状の損益分岐点を捉えておくことで、利益アップにつながるさまざまなシミュレーションが可能です。
例えば、賃金アップなど固定費が増加しても、いくら売上(販売単価×販売数量)があれば黒字にできるか、あるいは、目標利益を達成するために必要な売上高はいくらか、
などを求めることができます。目標とすべき売上高がわかれば、どのように販売を伸ばすかについて、集中した検討ができるようになります。
経理業務の電子化・ペーパーレス化に取り組んでみませんか。
昨今、取引先からの請求書等を電子データで受け取ることが増えていますが、今後、その電子データはそのまま電子で保存する必要があります。
一方、まだまだ紙でのやり取りも多く残っていると思います。
その場合は、取引先と相談して電子データでの受け取りに切り替えることや、スキャナ保存によって電子データ化することなどを検討しましょう。
経理業務の電子化・ペーパーレス化は経理業務の省力化・効率化を実現するだけでなく、経営者がよりスピーディーに業績を把握することにつながります。
売上から変動費を引くと限界利益になり、限界利益が固定費より多いと黒字になります。
変動費と固定費を分けることで、利益を出すためには売上がどれぐらい必要なのかを把握できます。
しかし、通常の損益計算書は、支出部分を「売上原価」と「販売費及び一般管理費」に分けるため、変動費と固定費を迅速に確認することができません。
ここで役立つのが支出部分を変動費と固定費に分類し直した変動損益計算書です。
この変動損益計算書を経営により活用するためには、その費用が固定費なのか変動費なのかを実情に合わせて見極めることです。
業種・業態によっては売上にともなって変動する要素が固定費に含まれていることもあります。
この部分を変動費として管理することで、より正しい限界利益が把握できることになります。
固定費と変動費が自社の実情に合っているかどうかを確認してみましょう。
原材料費や仕入価格の上昇が利益に影響を及ぼしています。変動損益計算書を活用して黒字化にする方策を考えてみましょう。
自社商品の限界利益率を商品ごとに調べてみましょう。売上単価の高い「主力商品」が必ずしも限界利益率の高い儲かる商品とは限りません。
売上単価よりも、限界利益率の高い商品の販売を伸ばすことで、利益の拡大につながります。
売上高を「単価×数量」の式に分解すれば、いくら売ればよいのか(金額ベース)、いくつ売ればよいのか(数量ベース)で検討することができます。
変動損益計算書を商品グループ別、部門別などに分解することで、自社の利益構造もわかるようになります。
京セラ創業者・稲盛和夫氏は、企業は製品や技術力、生産技術、資金力などの「見える資源」だけでなく、社員の能力ややる気、知恵、逆境を乗り越える力などの「見えない資源」もあって初めて発展、成長できるといいます。
稲盛氏は人生で成功するための方程式として「人生・仕事の結果=考え×熱意×能力」を提唱しています。多少能力は劣っていたとしても、強い情熱があれば素晴らしい成果を上げられることを、過去に実感しています。
さらに重要なのは考え方で、考え方がマイナスだと結果はマイナスになります。
創業間もない京セラが大企業に伍して戦うことができ、急成長できたのは熱意や考え方がプラスだったからですが、そのベースとなったのが、稲盛氏自身の強い情熱と経営理念でした。
変化の激しい時代だからこそ経営理念という見えない資源の価値を改めて考えてみてはいかがでしょうか。
ゼロゼロ融資(実質無利子・無担保融資)の利子免除期間(3年)を経過すると利子を返済していかなければなりません。
また、元本返済の据置を受けている場合は、その期限に応じて返済が始まることになります。
現在、資金繰りが安定していても、借入返済の原資を確保していかなければなりません。
借入返済の原資は「利益」です。その確保には、①付加価値(限界利益)を引き上げる、②固定費を極力抑える、この2つの組み合わせによって黒字決算を実現させることが必要です。
借入返済について、漠然と考えるのではなく、具体的な数字に落とし込み、返済に必要な目標利益を計算し、それを目標として取り組みましょう。
例えば、コロナ禍で売上高がゼロになるような店舗もあり、補助金等を申請してもなかなか給付されず、困った方もおられたでしょう。
そんなとき自己資本が潤沢であれば、社員の給与や店舗の家賃を払い続けることができます。
このようなことから、今、自己資本に関心が高まっています。自己資本は、経済情勢が悪化したときに企業を守る防波堤となるのものといえます。
自己資本比率を高めるには、付加価値(限界利益)を高めることが前提となります。
大事なことは、絶え間なく商品の品質向上やサービス提供の工夫を行うとともに、月次決算の精度を高めて、業績管理をより確実なものとし、コスト削減に努めて利益を出し、適正に税金を納めて内部留保をすることを地道に進める必要があります。
材料費をはじめさまざまなコストが高騰する中にあっても、付加価値を高めて、給与を増やし、社員に夢や希望を与える企業を目指しましょう。
付加価値とは、会社が創造した価値といえるもので、簡単にいえば「売上高」から「変動費」を引いた「限界利益(粗利)」のことです。
変動損益計算書を活用し、付加価値の増加を目指し、その結果として付加価値の増加の範囲内で人件費を増やせば、労働分配率の上昇を抑えられます。
企業は、ゼロゼロ融資(実質無利子・無担保融資)等の返済の本格化や、原材料・仕入価格(変動費)、燃料費・光熱費(固定費)などのコスト上昇という厳しい状況の中にあり、付加価値を増やす対策が必要となっています。
利益確保のための方策を検討して、アクションプランに落とし込み、資金計画を作成しましょう。
このような収益力改善の取り組みに対して、国も「ポストコロナ持続的発展計画事業」(ポスコロ事業)などで支援しています。
ポスコロ事業は、経営改善に取り組む企業が、税理士などの認定支援機関の支援を受けて、資金計画、損益計画、アクションプラン等による早期経営改善計画を策定する場合に、費用の一部を国が補助する制度です。
4月に制度が改正され、過去にこの制度を利用した企業でも、一定の場合は2回目の利用が可能になりました。
登記簿上の所有者がわからない「所有者不明土地」の解消のため、相続登記や住所等変更登記が罰則付きで義務化されるなど民法等が改正されました。
土地利用の円滑化の観点から、遺産分割の長期未了状態を解消するための新たなルールも導入されます。
登記の義務化については、相続によって不動産を取得したことを知った日から3年以内に相続登記をしなければなりません(令和6年4月1日施行)。
登記簿上の所有者は、住所や氏名を変更したときから2年以内に変更登記が必要です(令和8年4月27日までの政令で定める日から施行)。
この改正は、施行日前に発生した相続も対象となるため、注意が必要です。
遺産分割の新たなルールとして、相続開始から10年経過後に行う遺産分割については、原則として、法定相続分または指定相続分によって画一的に行うことになりました(令和5年4月1日施行)。
エネルギー・原材料価格の高騰、急速な円安などから原価の上昇を招いていますが、単に原価上昇分を反映させるだけの値上げは難しいと考えている人も多いのではありませんか。
「価値」を高めて「価格」を上げるなど、「上手な値上げ」を考えてみましょう。
①値上げしやすい商品や取引先から値上げする。
②商品の機能・品質を基本形のみに絞った「基本形」の部分を値下げして、無償提供していた付属品やサービスなどをオプションとして有料化する。
③価格帯を増やす(例えば、2つの価格帯のある商材について、中間にもう1つ価格帯を設けるなど)。
④直販を増やして、粗利益の増加を図り実質的な値上げ効果を得る。
⑤独自化や差別化によって、高い価格で販売できるブランドをつくる。
金融機関や取引先に対して、自社の概要を伝える機会が増えています。そのようなときは「ビジネスモデル俯瞰図」を作成して、自社の商流や事業内容をわかりやすく伝えましょう。
「ビジネスモデル俯瞰図」は、自社の業務の見直しや、課題の解決にも役立てることができます。売上高や構成比、限界利益などの数値を書き入れることで全体の流れがより具体的に見えてきます。
近年の金融機関においては、財務情報のみに依存せず、事業内容や成長性を適切に評価(事業性評価)して融資や経営助言を行うことを推進しており、その際にも「ビジネスモデル俯瞰図」は役立ちます。
また、早期経営改善計画策定支援事業(ポスコロ事業)においても提出が求められます。
役員と会社の関係は、同族会社やオーナー企業であっても、法律上は別人格です。
役員と会社との間で、金銭や不動産の貸し借り、資産の売買などを行う際には、外部との取引と同様の手続きを踏まないと、会社法上や法人税法上の問題が生じるおそれがあります。
例えば、金銭や不動産の貸し借りを行うときは、「金銭消費貸借契約書」や「不動産賃貸契約書」を作成します。
会社への損害を防止するため、取引の内容によっては株主総会や取締役会の承認決議を受けて、議事録を作成します。
役員が会社から受け取る、または支払う利息や家賃が適正でない場合に、法人税法上、役員給与とされる場合があるため注意が必要です。
金融機関に融資申込みや業績の報告を行うときには、月次試算表などの根拠資料を一緒に提供しましょう。
それらの資料により、金融機関は業況変化や業績見通しを確認できるため、融資手続きなどがスムーズになるでしょう。
コロナ禍などさまざまな理由で、企業と金融機関との面談の機会が減る中で、金融機関との信頼関係を維持していくには、これまで以上に、正確でタイムリーな情報提供が重要になっています。
また、「TKCモニタリング情報サービス」を利用すれば、決算書や月次試算表データを金融機関に自動的に開示することができます。
日本電産の創業者・永守重信氏は、①井戸掘り経営、②家計簿経営、③千切り経営という3つの経営手法を駆使して、何度も危機を乗り越え、会社を成長させたと言います。
①井戸掘り経営は、井戸水を汲むように、考えれば考えるほど知恵やアイデアは湧いてくるという考え方
②家計簿経営は、小さな節約を積み重ねてやり繰りする家計にならって、会社も支出の一つひとつを見直して、経営改善を図るという考え方
③千切り経営は、大きな課題や難しい課題は、いくつもの小さな課題に分解すれば、解決策が見つかるという考え方です。
このような経営手法を参考に、社長と従業員が一緒に考える機会をつくり、黒字化に向けて頑張りましょう。
役員給与は、会社法上、株主総会において総額を決議し、各役員の給与額は、取締役会や取締役間の協議等で決定します。
実際の支給にあたっては、1か月以下の一定期間ごとに同額で支給する定期同額給与であれば、全額損金算入が認められます。
ただし、期首から3か月以内の改定など一定の場合を除いて、原則として、事業年度の途中での支給額改定は認められません。
役員賞与を支給したいときは、予め支給時期や支給額を決め、所定の期日までに税務署へ事前確定届出給与として届け出て、届出どおりに支給すれば損金算入が認められます。
オーナー企業の場合、経営者自らが自身の役員給与を決めることになりがちです。
自分の会社という意識から主観的に決めるのではなく、前年実績、当期の利益計画や業績見込みなどを基礎に、経営の現状と1年以内に返済する借入元本額を含めたキャッシュ・フローを確認して、よく検討した上で給与額を決定しましょう。
コロナ禍によって大きく変わった人々の消費行動や認識などは、コロナ収束後も以前と同じに戻ることはないでしょう。
そういう中で企業は、経営環境の変化に適合していかなければなりません。将来が明確でないのであれば、自社が望む新しい状況を創り出すことが可能です。
将来なりたい会社像を描いて、それを実現するための戦略を考えてみましょう。
戦略には「他社がマネのできない」「他社がマネをしたくない」自社の強みが必要であり、それを見つけることから始まります。
そしてその強みを活かすために、商圏、事業、顧客、商品・サービスの機能、品質、価格、納期、販売方法・ルート、設備・施設などに分けて、力を入れるもの、削減するものなどを検討しましょう。
長期間未回収の売掛金は、消滅時効(5年)に注意しつつ、取引先への訪問や電話によって粘り強く交渉を重ねます。取引先に買掛金がある場合は、売掛金と相殺する対応が考えられます。
相殺でも完済できなければ、残金の支払いについての協議が必要となります。協議では確実に支払うことの確約を得て、その内容は文書にしておきましょう。
また、催告書を配達証明付きの内容証明郵便で送付すれば、取引先への強い意思表示になるため、事態が進展する可能性があります。
法的手段としては、通常の訴訟に比べて手続が簡易な「支払督促」(申立てに基づいて簡易裁判所の書記官が相手方に支払いを命じる)や、「少額訴訟」(60万円以下の請求に限って利用できる)などがあります。
売掛金の回収には、日頃の管理が大切です。
まずは、請求の締切日と支払日、支払方法(振込、手形等)など、約定をきちんと把握しておきます。
入金があれば、どの取引先か、請求金額と合っているか、約定どおりか、などを売掛金台帳で管理します。
売掛金が未回収の場合、その原因の確認が解決の決め手になります。
自社の請求もれやミス、商品・サービスへの不満・クレームなど、売掛金が支払われない原因が自社にあるときは、顧客への早急な対応や再発防止策をとるなど、信用回復に努めましょう。
取引先において、納品後の検収が未実施、経理ミスなどの理由で支払いが遅れていることもあります。日頃から取引先とのコミュニケーションを図っておくことが大切です。
給与の支給額の計算と振込、源泉所得税・社会保険料の計算と納付などの毎月の給与計算業務を電子化することで、業務の負担を軽減しましょう。
給与、源泉所得税・社会保険料は、「PXシリーズ」などの給与計算ソフトの利用によって、支給額や控除額を自動計算することができます。
給与・賞与の振込、源泉所得税・住民税・社会保険料の納付は、インターネットバンキングやダイレクト納付を利用して、社内やテレワーク先から振込、納付を行うことで、自社のパソコンが金融機関の窓口のようになります。
ルーティン業務だからこそ、電子化による業務負担の軽減効果は大きくなります。